新規事業開発におけるユーザーインタビューのポイントまとめ

ビジネス

ユーザーインタビューは、新たな製品やサービスを開発する際に、顧客のニーズを理解し、ビジネスに活かすために欠かせないプロセスです。インタビューは、実施の目的を明確にし、情報を効果的に引き出す方法を知ることで、質の高いインサイトを得ることができます。

この記事では、インタビューの準備から実施、フォローアップまでの具体的なステップと重要なポイントをまとめました。

実体験を通してまとめた学びのメモです。

1. インタビュー前の準備(最重要)

インタビューの成否は、事前準備に大きく依存します。仮説の設定、ゴールの明確化、適切なターゲット選定を行い、顧客から価値あるインサイトを得ることが重要です。

仮説を設定する

インタビューは、仮説検証の場として位置づけます。仮説がなければ、顧客の意見に振り回されがちです。仮説を立てる際には、「ユーザーは自分にとって本当に価値があるものを理解していない」「『あったほうがいい』とされるものは、実は『なくても良い』かもしれない」といった現実を踏まえ、本当に解決すべき問題を見極めます。

明確なゴールの設定

インタビューの目的が不明確だと、内容が散漫になりがちです。たとえば、「新規顧客が直面する問題点を明らかにする」や「既存顧客が抱える不満を把握する」といった具体的なゴールを設定すると、インタビューの効率が向上します。

また、インタビュー実施件数に正解はありません。1時間程度のインタビューであれば、目安としては、3〜10件程度です。

適切なターゲットユーザーの選定

期待する条件を満たすユーザーがインタビュー対象です。条件に満たない場合でも、態度が悪い場合でも、得られる情報が何かしらあるように準備をしておきます。また、ユーザーが「あったらいい」という要望を口にしたとしても、実際には使わないことが多いため、ターゲットユーザーがどれほど本気で課題を解決したいのかを見極める姿勢も大切です。

2. インタビュー実施時の基本姿勢

インタビューを効果的に進行するためには、インタビュアーの姿勢や態度が重要です。リラックスした雰囲気を作り、話しやすい空間を提供することで、顧客から本音を引き出しやすくなります。

話しやすい雰囲気作り

リラックスした環境を整え、緊張を和らげる工夫が必要です。インタビューの開始前に軽い世間話を交わすなど、自然に会話を始めることで、顧客も安心して回答しやすくなります。

中立的な立場の維持

インタビュアーは中立的な立場を保ち、顧客が感じていることを率直に話してもらうように努めます。評価的なコメントや意見を挟まず、顧客が抱えている悩みや要望に耳を傾ける姿勢が重要です。

インタビューは自社側2名以上で、相手は1名に限定

顧客インタビューは、自社側から2名以上で対応することが望ましいです。質問に詰まった場合も助け合えるうえ、メモ担当もただ記録するだけでなく、インタビュアーが質問に困っている時には追加の質問をするなど、補完的な役割を果たします。質問を交互に行うことで、他のインタビュアーが次の質問を考える余裕も生まれます。

代替行動の確認が重要

不満を語ってもらった後には、顧客がその問題を解決するためにどのような代替行動を取ったかを確認します。代替行動を取っていない場合、解決の必要性が低い可能性もあるため、不満の重要度を正確に把握できます。

オープンな質問を心がける

顧客がYes/Noで答えられない質問をすることが、具体的な情報を引き出すポイントです。回答の幅を広げるように工夫し、顧客が自由に考えや意見を述べやすい状況を作ります。

先入観を持たずに傾聴する

顧客の話を聞く際には、先入観を捨てて客観的に耳を傾けることが大切です。顧客の言葉の裏にある本質的なニーズを把握し、真の課題を見つける意識が重要です。

3. よくある失敗とその理由

インタビューでは、仮説に固執しすぎたり、質問が誘導的になることが失敗の原因となります。このような失敗を避け、インタビューの質を高めるためのポイントを見ていきます。

誘導的な質問

特定の答えを引き出そうとする質問は避けるべきです。たとえば、「○○なことが困っていますよね?」といった誘導的な問いかけは、顧客の本音を阻害する原因になります。

仮説の押し付け

仮説を検証することは大切ですが、顧客に押し付けると、インタビューの客観性が損なわれます。仮説はインタビュアー側の理解であり、顧客から得られる情報と照らし合わせながら柔軟に修正することも視野に入れます。

抽象的な質問

具体的な答えが返ってこない場合は、質問が抽象的すぎる可能性があります。「どのように感じますか?」ではなく、「具体的にどのような問題がありましたか?」といった具体的な質問にすることで、顧客の体験や事例を引き出しやすくなります。

深掘り不足

表面的な答えで終わらせると、問題の本質が見えてきません。たとえ簡潔な答えでも、その背景にある理由を深掘りしていくことが大切です。

4. 具体的な聞き方のテクニック

効果的に顧客の意見を引き出すためには、具体的な聞き方が重要です。以下のテクニックを活用し、スムーズに会話を進行させましょう。

過去の具体的な体験を聞く

「過去に似た状況でどのように対応しましたか?」と尋ねることで、顧客の価値観や行動の背景を深く理解できます。

Yes/Noで終わる質問は避ける

「その製品が便利ですか?」というYes/Noで答えられる質問ではなく、「どの点が便利だと感じますか?」などのように、自由に話せる質問を心がけます。

5. 重要な質問例

効果的なインタビューを行うためには、事前に質問を用意するのが役立ちます。以下は、顧客の行動や価値観を把握するための具体的な質問例です。

  • 「その問題に対して、どんな対処をしていますか?」
  • 「それについて、周りの人とどんな会話をしていますか?」
  • 「その課題を解決するために、いくらまでなら支払いますか?」

6. フレームワークの活用

インタビューを体系的に行うために、フレームワークを活用するのも効果的です。SPIN質問法や5W1H、MECEなどのフレームワークは、インタビューの流れを構築するのに役立ちます。

SPIN質問法

  • Situation(状況):状況に関する質問
  • Problem(問題):顧客が抱える問題を探る
  • Implication(影響):問題がもたらす影響を理解する
  • Need-Payoff(解決策):顧客が求める解決策や価値を引き出す

5W1H

「いつ(When)」「どこで(Where)」「誰が(Who)」「何を(What)」「なぜ(Why)」「どうやって(How)」という視点から、インタビュー内容を掘り下げます。

7. 記録方法

インタビューの内容を記録しておくことで、後から振り返りや分析がしやすくなります。

音声録音・映像の録画(要許可)

音声や映像の録音を行うと、発言のニュアンスを正確に把握でき、振り返り時のインサイトが深まります。

メモのポイント

発言内容に加え、表情や態度などもメモしておくことで、インタビューを後から再評価する際に役立ちます。

8. フォローアップ

インタビュー後のフォローアップは非常に重要です。プロジェクトが進行した際には顧客になったり、プロジェクトメンバーとして協力してもらう可能性もあるため、感謝の意を示し関係を強化します。

お礼状の送付

お礼のメールやメッセージを送り、協力に対する感謝の意を示します。

追加質問の実施

後日追加で確認したい点が出てきた場合には、再度連絡し、詳細を伺います。

より良いインタビューをするために

顧客インタビューの質を高めるためには、事前準備、インタビューの姿勢、質問の仕方、フォローアップなど、各ステップでの配慮が重要です。インタビューで得られるインサイトは、製品やサービスの改善に直接影響します。顧客の本質的なニーズを理解することで、効果的な商品開発やサービス提供が可能になります。